読書素人
『インクルージョン』
を読んでみた
作者 島 信一朗
目次
あらすじ・内容
紹介文
○著者からのメッセージ
インクルージョンは今の世にこそ最も必要な考え方です。
このインクルージョンの行間の中には、極めて大事な人間ひとりひとりの存在をどう考えるか、どう見つめるかという理念が、一貫したメッセージとして込められています。そして、ひとりひとりの命に軸足を置いて積み上げられていくインクルージョンの実践からは、未来を明るく切り開く希望の光が眩く輝き、私たちが歩むべき道を足元から照らしてくれるのです。それは、どこまでもポジティブで、さらにクリエイティブで、且つ普遍的で、誰にでも手が届くこと。他人ごとではなく、誰もが自分ごととして未来志向に考えることのできることばかり。
「私たちの社会は今、これまでに経験したことがないほどのスピードで変革の時代を迎えています。人間関係の希薄化・コミュニケーション力の低下という代償を払いながら。」(本文より引用)
そのような中での大切なことは、トップダウンの問題解決型ではなく、新しい価値観をボトムアップ型で生み出していく創造性豊かな考え方をどのように育んでいくかということです。
本書は社会を生きる人間の価値観ではなく、人間を生きる命の価値観。その本質を考える切っ掛けにしていただけることを願い書き下ろしました。
社会は2020年を契機に大きく変わろうとしています。
「東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は、大会成功のための大切な考え方として「インクルージョン」を根底に置き、ひとりひとりが互いを認め合い、多様性と調和を大切にする共生社会をはぐくむ契機となるような大会にすると打ち出しました。そして、世界にポジティブな変革を促し、その成果をレガシーとして未来へ継承していくとしています。また、日本政府では、この開催を共生社会の実現に向けて人々の心の在り方を変える絶好の機会であると位置づけて、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を策定し、特に「心のバリアフリー」を推進する様々な取り組みが、各府省庁間の垣根を超えて分野横断的におこなわれるようになってきました。2020年は日本をあげて、そして世界へ!!と、インクルージョンの輝きを発信する大きなチャンス。人間力のまだ見出し切れていない輝きを!!本来あるべき姿を未来へと発信する絶好のチャンスなのです。」(本文より引用)
このような中で私たち人間は何をすべきなのか。人間の存在をどう考えて、そしてどうあるべきなのか。
本書の中には随所に、そのヒントとなる種をたくさん植えこみました。どうぞ日の目と心の潤いを浴びて、大きく成長していきますことを切に願います。
さあ、インクルージョン時代の幕開けです。共に未来を切り拓いてまいりましょう!!
○目次
第1章 インクルージョンのメッセージ
■インクルージョンの本質(普遍的四つの人間観)
■コンセプト(基本概念)
■課題認識
■社会的警鐘
■インクルージョンの信条
■行動指針
■ミッション
■かけがえのないひとりひとり
第2章 インクルージョンの実践
■インクルージョンは優しさの波紋
■心の宝石
■心震える感受性
■UD教育の取り組み−北海道ユニバーサル上映映画祭での実践より−
■インクルーシブフェスティバル
■分かち合う喜び
第3章 インクルージョンの社会観
■キラキラと輝く人間の本質
■インクルージョンの哲学と実践
■社会の豊かさ
■宝石のインクルージョン
■インクルージョンの価値観
■未完成な社会はとこしえ
■社会変革
■反省の地が出発点
■広がるキラメキ
第4章 インクルージョンの障害観・人間観
■障害の普遍化
■障害とは
■障害者の呼称
■「以和為貴」
■障害に感謝
■新たなる価値形成
■障害者は価値ある存在
■障害という力
■人間力と社会力の相互性
■インクルージョンのスタンス
■インクルージョンは心のゆりかご
■結果より経過
■エンパワーメント
第5章 インクルージョン2020〜
■オリンピックとパラリンピック
■2020に寄せられる期待
■開会式・閉会式
■マラソン
■陸上競技場
■団体競技
■クリエイティビティ
■インクルーシブスポーツ
■アイスブレイク
■ユニバーサルデザイン2020行動計画
第6章 インクルージョンの普遍性
■ユニバーサル
■ユニバーサルデザイン(UD)
■インクルーシブデザイン
■インクルージョンの親和性
第7章 インクルージョンの使命
■心の笑顔
■障害者が社会を変えていく
■心のゆとり
■尊き存在
■ヘレンケラーのメッセージ
■まばゆいキラメキ
ボク的みどころ
世の中がグローバル化していき、
多様性いわゆるダイバーシティという価値観が浸透してきたことによって
(まだまだ課題は多いが)
この「インクルージョン」という言葉もかなり広がってきたと思う。
理解できているだろうか。
私たちは、
多様性を認めるだけではなくて、その先の
「インクルージョン」
にたどり着かなくてはならない。
その為には、インクルージョンとは何かを理解する必要がある。
この本を一冊読み終えれば、
おのずとインクルーシブ的考え方を身に付け
社会に対する見方が変わり、
社会の現状の問題点を新たに見つけられるかもしれない。
ボク的感想
ボクはこの本を読了し、
現状の日本社会に矛盾を見出すにはいられなかった。
日本そして世界は今、インクルージョンを目指している。
「誰もが排除されていない社会」
「もとから全員が包含されている社会」
ボクはこの理念を聞いたとき、
「今のままじゃ絶対無理だよな」
と思わずにいられなかった。
なぜか。
その原因は
「日本の学校体系」にあると思っている。
日本では現在、
特別支援教育として
障害のある児童生徒が通う特別支援学校という学校が存在している。
つまり、障害のある児童生徒を「分離」することによって
特別支援教育は行われているわけだ。
このシステムに沿って育ってきた日本人にとって
「はい、社会に出ました。
インクルージョンです。」
なんて言われても、障害のある人とどうかかわっていくか、
どうすればいいかすらわからなくなっているのだと思う。
つまり、特別支援学校というシステムを作り上げてしまったことにより、
自分たちでマイノリティに対する偏見と特別視だけを残してしまったのだ。
ボクは、日本がインクルージョンを達成するためには
この学校体系から変えていく必要があると感じている。
実際、ヨーロッパのイタリアなどには
特別支援学校と言われる学校は存在しておらず、
障害の有無に関わらず、全員が一つの教室に集まり学習をしている。
そこには充分な支援者の数や施設の整備、学習サポートが整っており、
わざわざ障害の有無で学校を分けるなんてことはしていない。
ボク的には、日本もこの体系を目指すべきだと思っている。
そのためには、
障害に対する理解や人員補充などあらゆることが必要になってくる。
皆さんも、一度この本を読んで
インクルージョンについて考えてみてはいかがだろうか。